就業規則とは
就業規則とは,労働条件や職場規律等の職場のルールを定めたものであり,「多数の労働者にかかる労働条件や職場規律について使用者が定める規則」の総称です。就業規則は日本の労働関係上は大きな役割を果たしています。
就業規則は,労働者に周知され,内容が合理的であれば労働契約の内容になるとされています。そして,「周知」とは,労働者が知ろうと思えば知りうる状態に置かれれば足りるとされており,労働者が実際に就業規則の内容を知っているかどうかは問いません。
ですから,就業規則を見たことがなくても,通常はその内容に拘束されるということになります。
労働契約と就業規則の内容が食い違う場合はどうなるのか
就業規則が一番問題になるのは,労働契約と食い違っている場合です。就労規則には最低基準効(労働契約法12条)という効力があります。これは,個別の労働契約との関係では,就業規則の基準に達しない労働条件を定める労働契約をその部分について無効とし,無効となった部分を就業規則で定める基準によって補う効力があるということです。要するに,個別の労働契約が,就業規則で定められた規定の内容を下回っていた場合には,就業規則の通りになるということです。
最初から労働契約と就業規則の内容が食い違う場合というのはそれほど多くありません。しかし,働いている間に就業規則の変更がなされることがあります。これが個別の労働契約を不利益に変更するものである場合はどうなるでしょうか。
労働契約法9条には「労働者と合意することなく,就業規則を変更することにより,労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と定められており,これを反対解釈すると,労働者の合意があれば就業規則を労働者に不利益に変更することも可能であるということになります。
そして,労働契約法10条では,就業規則の不利益変更について労働者の同意がない場合であっても変更が許される場合を規定しています。
このように,就業規則が不利益に変更される場合であっても,労働者の合意か労働契約法10条の要件を満たせば,変更は可能です。
残業代請求に関係する不利益変更はどういうものがありうるか
例えば,所定労働時間や残業代の計算方法が就業規則にしかないにもかかわらず,その後,それを不利益に変更する就業規則の変更というのはありうるでしょう。所定労働時間を長い時間に変更すれば残業代計算の基礎となる時給が少なくなってしまいますし,計算方法変更も同じようなことがありえます。さらに,就業規則上の固定残業代の規定が,裁判例に照らすと違法であり無効となってしまう可能性が生じたため,その固定残業代の規定を変更するということはありうるでしょう。
このような変更を正面から争った裁判例は今の所見当たりませんが,これがそもそも不利益変更に当たるかも含めて,争われる余地があると思います。
就業規則は一度見てみましょう
就業規則は通常の事業場であれば,ファイルにして誰でも見られるところに置いてあったり,パソコンにデータとして保存されていますので,見ようと思えば見られます。全部目を通すのは大変ですから,賃金の規定のところくらいは目を通してみても良いかもしれませんね。