知っておけば安心の
よくある争点

企業側弁護士は防御する方法を様々考えて反論してきますが、
一般的な残業代請求において、会社側からされる反論はある程度決まっています。
以下の3つが主なものです。

実際にはそんなに働いてない?!

まず、一番わかりやすいのは、「実際にはそんなに働いていないだろう。」という反論です。この反論は、タイムカードなどの客観的資料があってもされます。例えば、タイムカード上は9時に出勤して21時に退勤したと打刻されているとします。これについて「そのうち18時以降は特にしなければならない仕事はなかった、あったのなら何をやったのか説明しろ」みたいな反論がくるわけです。ここではあまり細かい説明をすることはできませんが、裁判所は原則としてタイムカードに打刻されている通りの労働時間だと認めます。

しかし、休憩時間が打刻されていなかったからといっても1時間くらいの休憩があったとされることがほとんどですし、始業時間よりも早く仕事を始める、いわゆる「早出残業」については裁判所は残業だと認定することには消極的だと考えられます。労働時間として認められるには、会社からの指揮命令に基づいた労務を提供していることが必要となりますが、早出残業は会社がその労働を把握していないことが一般だからでしょう。あとは、例えば運転手さんの待機時間などもよく争われますが、法的に難しい話になってくるので、直接お問い合わせください。

残業代が既に払われてる?!

次に会社の反論として考えられるのは、もう残業代を払っているというものです。どういうことかというと、毎月会社が残業代を細かく計算するのが大変なので、最初から「毎月30時間くらい残業するだろうから、残業代として毎月5万円を払っておく」ということがよくなされます。そうすると、残業時間が30時間より少ない場合には、会社は毎月残業代の計算をしなくて良くなるわけです。このように固定の金額で支払われる残業代を「みなし残業代」とか「固定残業代」といいます。
このように説明すると、例えば基本給30万円の人が残業代を請求したときに、会社から「そのうち10万円は残業代だ」という反論がされるようにも思えます。

しかし、休憩時間が打刻されていなかったからといっても1時間くらいの休憩があったとされることがほとんどですし、始業時間よりも早く仕事を始める、いわゆる「早出残業」については裁判所は残業だと認定することには消極的だと考えられます。労働時間として認められるには、会社からの指揮命令に基づいた労務を提供していることが必要となりますが、早出残業は会社がその労働を把握していないことが一般だからでしょう。あとは、例えば運転手さんの待機時間などもよく争われますが、法的に難しい話になってくるので、直接お問い合わせください。

管理職だから支払わない?!

最後に、これも本当によく主張されるのですが、管理職は管理監督者に当たるから残業代を支払わないという反論です。
法律上の管理監督者に当たる労働者は、残業代が支払われません。
そういう意味で、認められればほぼ会社が全面的に勝利したということになります(深夜割増賃金など支払わなければならないものもありますが。)。
労働者の皆さんの中にも、管理職は残業代が払われないと思っている人がよくいます。

しかし、実は、会社内での管理職は、法律上の管理監督者とイコールではありません。そして会社内でのほとんどの人は管理監督者ではないと思っていただいて差し支えありません。法律上の管理監督者にはどういう人なのかというと、裁判例の判断基準は、①労務管理上の使用者との一体性、②労働時間管理を受けていないこと、③基本給や手当面でその地位にふさわしい処遇を受けていることを考慮するというものです。イメージとしては「経営者側の人」です。
ですから、会社の経営に大きな決定権や影響力があり、出勤も退勤も比較的自由で、かつ報酬も良い人が管理監督者ということになります。これまでの裁判例では、工場長、部長、店舗の店長や支店長の地位にある人について管理監督者でないという判断がされることが多いです。中小企業で管理監督者というと、基本的に社長か、それにとても近い人になるでしょう。大企業なら取締役レベルでしょう。東京地裁の運用においても、管理監督者の主張が認められることはまずないという印象です。
ただし、管理監督者とまでは言えなくても、それに近い立場にいたということが、和解の条件などに影響することもあるので、油断せずに戦う必要があります。

最後に知っておきましょう
重要なポイント

時効があります

請求できる未払い賃金は2年間分です。(※)1か月経つごとに1か月分ずつ消滅していってしまいます。
そのため、早期に時効を止める手続きを取らないといけません。
残業代を請求しようか迷っていたらまず弁護士に相談してみましょう。

※2020年4月以降に発生する賃金については、消滅時効は3年に延長されました。

未払いは刑事罰の対象になりえます

賃金の未払いは刑事罰の対象になります。会社はもちろん、代表者などの個人もその対象になります。
労働基準監督署も、会社に対してとても強い権限で調査を行うことが法律で認められています。
残業代の請求は、労働者の方にとってあまりに当然の権利なのです。

すぐに弁護士に連絡してほしい人

今の会社で残業代をもらっていないが、もらえるのか知りたい
前の会社で残業代をもらっていないが、今からでももらえるのか知りたい
今もらっている残業代が正しいか知りたい