会社が労務管理をしている場合の資料収集の方法は?

大きく分けて2つの収集方法があります。

まずは労働者の側でタイムカードやICカード等の資料のコピーを取ってしまうことです。量が膨大で難しいときは3か月分等一部だけでも取得しておくだけでも全然違います。一応会社の内部資料ですので、理由もなく外部に持ち出すのはよくありませんが、法的に適切な賃金請求をするという正当な目的がありますから、その目的の限りでコピーを取る等しても許されます。

あとは、正面から会社に労務管理の資料を下さいとお願いするという方法があります。この方法を採る場合には、まず弁護士に依頼をして、弁護士から会社に対して就業規則等の他の資料と一緒に労務管理の資料の交付をお願いするのが一般的だと思います。ほとんどの場合は、会社は任意で何らかの資料の交付をしてきます。しかし、交付されたとしても、何か大事な資料が抜けていたりして意図的な隠蔽がなされていることもありますので、しっかり資料の内部を検討する必要があります。

会社が資料を出してこない場合は?

もちろん、たまに会社が一切資料を出してこないことがあります。弁護士からの要求が完全に会社から無視されることはほぼありませんが、会社から「残業代等の未払い賃金はないから資料を出す理由もありません。」という返事をされることがたまにあります。こちらとしても、法的に未払賃金の支払請求権があるかどうかを検討するために資料を要求しているわけですから、資料がなければ検討そのものができなくなってしまいます。検討した上で未払い賃金の請求が難しいということであれば諦めもつきますが、残業をしていたという事実がある以上、資料を検討する前から諦めるわけにはいきません。

そういう場合に取る方策はいくつかありますが、一番オーソドックスなのは、まず労働者側の記憶を前提に訴訟提起をして、会社側の反論を待つということです。裁判の前に、裁判所に証拠保全の申立てをして、裁判所と一緒に会社に乗り込んで資料のコピーをしてもらうという方法もありますが、消滅時効によって未払い賃金請求権が消滅してしまうリスクがあったり、そういう会社はどのみち裁判外での話合いが難しいということがありますので、やはり裁判手続に移行するのがよいでしょう。

訴訟になれば防御のために必要な限りで会社から資料を提出してきます。もしそれでも労働者の主張立証のために会社の資料が必要であれば、労働者側から裁判所から会社に文書提出命令を発動するように申立てをすることになります。この命令に違反すると、会社に不利な事実を裁判所が認定できるというペナルティが生じるので、会社が裁判所の文書提出命令に従わないということは、考えにくいでしょう。ただ、普通は裁判所が文書提出命令を発動する前に、裁判所から会社に対して「何で資料出さないんですか?出してくださいよ。出さなければ文書提出命令を発動するだけですし。」と任意での提出を促して、会社もそれに応じるのが普通です。

何れにしても、残業代等の未払い賃金を請求することを考えられている場合には、個別具体的に証拠の収集方法を考えることになるので、まずは労働問題に強い弁護士に相談するべきでしょう。